持ち家政策の影響を受けて、わが国で持ち家が当たり前のごとく考えられたのは戦後といわれているが、これを見ていると一九四〇年頃には家づくりが「人生の楽しみ」の一つと考えられはじめていたことがわかる。また、そうした家づくりにおいて「自分で自分の家を設計する、そこに、無限の楽しい世界が、あるのではありませんか」と、単に家を持つことだけではなく、自分だけの住まいを持てること、そのための設計という間取りづくりの行為こそ最大の楽しみであると、述べている。そして、そうした行為を思う存分楽しむための道具こそ「間取板」ということになるのだ。しかも、興味深いのは、長尾が間取りを考える行為を、家を構える主人だけの特権ではなく、「線の描けない、全くの素人にでも、女学校の生徒さん達」も楽しめると述べていることである。そこには、「間取板」を用いて間取りを考える行為を、施主の特権とするだけではなく、やがて持つことになる住まいを夢見ることを万人に求めようとする意図が垣間見える。
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